総合物流マップ
日本国内の倉庫立地を一次スクリーニングするツールです。公開統計、所要時間の推計、2つの配置アルゴリズムを、バックエンドなしで動かします。
日本のどこに倉庫を置くかは、いずれも公開されていながら、それぞれ別々に公表されている情報で決まります。都道府県別の倉庫面積、都道府県間の貨物流動、ドライバーの確保しやすさ、1日に法令上走れる距離、工業地の価格、そして浸水の想定です。総合物流マップは、それらを1枚の地図に載せ、すべてを同時に見ながら一次スクリーニングができるようにしたものです。
公開データを使った個人プロジェクトであり、非商用です。出典のいくつかが非商用に限って許諾されているためです。
00 / ダッシュボードではなく、意思決定の道具
ダッシュボードは数字を見せます。ここで必要なのは、1,898の市区町村から実際に足を運ぶ数か所まで絞り込むことです。そのため絞り込みは漏斗の形をしています。市区町村の指標に対する必須条件を順に適用し、適用のたびに残った数を示します — 1,898 → 1,230 → … → 190。条件を満たさない市区町村は地図上で灰色になり、残った市区町村がその先すべての候補集合になります。条件はURLに入っているので、絞り込みはそのまま人に送れるリンクになります。
01 / 設計として静的
バックエンドはありません。データは公式の公表物からETLスクリプトで事前に組み立て、バージョン管理されたJSONにします。更新はGitHub Actionsが出典ごとの公表リズムに合わせて行います。ニュースは毎朝、軽油価格は水曜に公表されるので木曜です。マニフェストには元ファイルごとのサイズ、SHA-256、出典ページ、読み込むスクリプトを記録しているため、再構築は再現可能で、形式が変わったファイルは解析の前に気づけます。
地図は任せずに自前で描いています。沖縄と小笠原を別枠にしたランベルト図法、背景タイルは区分ごとのアフィン変換でその投影に載せ、詳細境界は画面に入っている都道府県の分だけ読み込みます。重い計算—1kmメッシュの人口、スコアの安定性検証、配置シミュレーション— はWeb Workersで動かします。配信されるものはすべて静的ファイルです。
02 / ライセンスをアーキテクチャに変える
緊急輸送道路、重要物流道路、港湾、貨物鉄道駅といったいくつかのレイヤーは、非商用に限って利用できる国土数値情報です。設計を決めたのは「表示してよいか」ではなく「取得できてしまってよいか」でした。2026年10月、運営事務局が国土交通省に確認したところ、こうしたデータを地図のレイヤーとして表示することは再配布にあたらない一方、閲覧者がデータそのものを取得できる状態 — ベクトルタイルやAPI— は再配布にあたりうる、という回答でした。
そこでこれらのレイヤーは、ビルド時に描画したラスタータイルとしてのみ公開しています。座標がブラウザに渡ることはありません。データとして公開しているのは規約が認める加工結果、すなわち各市区町村と各1kmメッシュから最寄りの当該道路までの距離、そして各港湾・各駅までの道路所要時間です。
ふつうは「出せません」で終わる制約が、そのまま公開の方式になりました。
03 / 数字に許される意味
所要時間は、道路交通センサスの速度、別モードとしての混雑時速度、フェリーを含む道路ネットワークから計算します。そのうえで到達範囲は2024年の改善基準告示 —拘束13時間、運転9時間、4時間ごとに30分の休憩— に照らして示されます。目的地は「4時間20分」ではなく、日帰り、1日運行、2日または中継として分類されます。
配送費は国土交通省の標準的な運賃で計算します。地域、車両クラス、距離帯の組み合わせで、省のQ&Aと同じ切り上げ方を使い、最短経路の実道路距離に対して求めます。CO₂は改良トンキロ法です。高速道路料金、待機、荷役、各種割増は含まれておらず、数字を出す場所にその但し書きを置いています。
立地スコアは11の評価項目を0〜100のパーセンタイル順位に直し、設定した重みで加重平均します。加重スコアは数字の形をした意見なので、各重みを最大±50%の範囲でランダムに振って200回計算し直します。場所ごとに順位の幅と上位10入りの割合が出て、それに耐えた場所だけに印が付きます。残りは、別の担当者なら違う順位を付けたであろう場所です。
配置シミュレーションは2つの目的関数を持ち、どちらも貪欲法で、各ステップを表示します。1つは最大被覆 — 既存拠点に加えて、制限時間内に最も多くの人口に届くN拠点。もう1つはp-メディアン — 標準的な運賃による配送費と、拠点あたりの年間固定費の合計が最小になる組み合わせです。合計が最小になる拠点数は、前提とせず結果として示します。
04 / これではないもの
これは公開データによる一次スクリーニングです。見積書でも、法的な境界でも、通行許可でもありません。公表の遅れ自体が対象の一部です。2025年4〜6月期の倉庫統計が公表されたのは2026年9月でした。そのため指標にはいつ時点かを必ず添え、フッターには出典ごとの更新頻度と次回公表予定を並べています。
CIは型チェック、ユニットテスト、ビルド、axeを含むエンドツーエンドの検証、ビジュアル基準の比較ジョブを回します。地図は静かに壊れるものだからです。